医療ブログ
着床前診断について
着床前診断とは(PGT) 近年、受精卵の細胞を取り出して、その細胞の染色体の分析が可能となってきました。 これが、「着床前診断」と呼ばれる技術です(Preimplantation genetic test:以下PGTと略します)。 受精卵は透明帯というたんぱく質の膜で覆われていますが、顕微鏡下にこの膜にレーザーで微小な穴を作ります。そしてその穴からせり出してきた細胞の塊から5個から10個程度を採……
RPR療法(「多血小板血漿」療法)の不妊治療への応用
この度、メディカルパーク湘南がPRP療法の実施可能施設として、厚生労働省から施設認定されました。 PRP療法は難治性不妊症や、子宮内膜菲薄化(子宮内膜が薄くなる状態)によって、着床障害を起こしている患者さんに対する治療法として期待されている再生利用の一つです。このPRP療法について解説して行きます。 ① PRP療法とは? PRP(:Platelet Rich Plasma)療法とは、「多血小板血漿……
私見ですが・・・
ニュースのキャスターが感染して、そのテレビ局内ではクラスターが発生していると報道されています。あれだけいつも政府の事を批判ばかりしていて・・・と思わずにはいられません。しかし、対岸の火事ではありません。藤沢市内でもコロナ陽性者が出るようになりました。院内でも、ひたすら消毒をしています。しかし、その消毒用のアルコールが入手できなくなってきており、何とか購入出来た次亜塩素酸ナトリウムで代用しています。……
新しい子宮頸癌ワクチン
このたび、メディカルパーク湘南では新しい子宮頸癌ワクチン「ガーダシル9」を導入します。日本では、子宮頸癌ワクチンには2価のものと4価のものしか認可されていませんが、現在、世界標準の頸癌ワクチンは9価となっており、若いうちにこの「ガーダシル9」を打つことによって子宮頸癌の約90%を予防できます。「〇価」とは何でしょうか?子宮頸癌の原因が、ヒト乳頭ウイルス(Human Papilloma Virus……
悟り
1か月ほど前の事。 もう少しで日付変更線を超える時間帯。 これから平和にお風呂入ってゆっくり寝ようと思っていたところで携帯が鳴りました。当直の中川先生からの電話でした。 「お休みのところ、すみません。分娩進行中の患者さんなんですが、赤ちゃんの状態がちょっと悪そうで。これから帝王切開をした方が良いと思いまして。」 「ああ、分かった。これから向かうよ。状態そんなに悪そうなのか?」 「いえ、今は胎児心拍……
緊急手術
以前、病院ホームページへ掲載していた記事を再掲させていただきます。少しでも皆様のご参考になれば幸いです。 データや状況などは当時のものとなっておりますのでご了承ください。(2013年9月掲載分) 遠くで電話が鳴っているようです。 夢の中なのか、現実なのか。 現実でした。病棟からの電話です。 「先生、妊娠35週の妊婦さんが、救急車で搬送されました。お腹が痛いそうです。」 時計を見れば夜……
難治症例に対する腹腔鏡手術について
通常の子宮の大きさは鶏の卵程度の大きさです。それが、今回の症例ででは胸のあたりまで子宮筋腫が発育してしまっていました。 この患者さまのご希望は、二つ。お腹を切らずに腹腔鏡で手術をして貰うこと、そして子宮を残して、筋腫だけ取って貰うこと。 断ろうかと迷いましたが、引き受けました。腹腔鏡はお腹に開けた4つの穴だけで、全ての工程を完結させる手術です。筋腫を取ったあとは、機械で砕く作業もあります。手術はト……
50兆個
以前、病院ホームページへ掲載していた記事を再掲させていただきます。少しでも皆様のご参考になれば幸いです。 データや状況などは当時のものとなっておりますのでご了承ください。(2012年6月掲載分) 昨夜、お産を取り上げました。 不妊治療と内視鏡手術の道をひたすら歩み始めて以来、産科医療からは久しく遠ざかっていました。自分で分娩を担当するのは実に7年ぶりのことになります。 陣痛は強くなっ……
長い長い治療の末に
以前、病院ホームページへ掲載していた記事を再掲させていただきます。少しでも皆様のご参考になれば幸いです。 データや状況などは当時のものとなっておりますのでご了承ください。(2011年9月掲載分) Sさんが初めて来院されたのは、3年ほど前の事になります。 すでに複数の不妊クリニックで体外受精を幾度となくやっておられましたが、一度も治療は成功せず、以前から持っている子宮筋腫を切除すれば妊……
着床障害に対する新しいアプローチ
着床障害とは 良好な胚(多くの場合は胚盤胞)を複数回移植しても妊娠に至らない状況は、「着床障害」と呼ばれます。 着床障害は、不妊治療専門医が最も頭を悩ます問題です。患者様も大変つらい思いをされます。胚のグレード評価では「4AA」とか「3BB」とか、とても良好な胚だと説明されていれば、期待が高まるのも当然です。にも拘わらず何度移植しても着床しない、あるいは化学流産で終わってしまう、という状況が繰り返……