医療ブログ

私見ですが・・・

文責:田中 / 2020年4月17日

ニュースのキャスターが感染して、そのテレビ局内ではクラスターが発生していると報道されています。あれだけいつも政府の事を批判ばかりしていて・・・と思わずにはいられません。しかし、対岸の火事ではありません。藤沢市内でもコロナ陽性者が出るようになりました。院内でも、ひたすら消毒をしています。しかし、その消毒用のアルコールが入手できなくなってきており、何とか購入出来た次亜塩素酸ナトリウムで代用しています。
専門家(ワイドショーで批判と煽るだけしかしない岡田某では無く)の先生方が、「もうコロナはあなたのすぐ近くにいると思った方が良い」と言うようなことを異口同音に仰るのを聞くようになっています。
いったい、このコロナ陽性患者はどれくらいいるのだろう?1000人に1人?100人に1人?多分、誰しもが知りたいのはそこだと思います。
4月16日付けのNew England Journal of Medicineに大変興味深い論文が掲載していたのでご紹介します。

(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2009316

研究チームはパンデミック状態のニューヨーク市内のコロンビア大学病院産科病棟で、分娩目的で入院した患者全例にPCR検査を行いました。強調しますが、全例です。調査期間は3月22日から4月4日までの2週間。その期間中に入院してきた患者数は合計215名でした。このうち、4名(1.9%)が入院時に発熱症状があり、4名全例がPCR検査陽性と判明しました。驚くべきはその後です。症状が全く無い、残りの211名の中で陽性になった人が29名(13.7%)もいたというのです。更に驚くべき結果が書かれています。この29名のうち、入院してから出産して退院するまで(この病院の場合、入院期間は平均2日間と記載されています)に新型コロナウイルス感染症状を発症した患者は、ただ1名だけだったそうです。
この結果は大変大きな示唆に富んでいます。調査は妊婦さんだけのものですが、妊婦の方が非妊婦よりも罹患率が高くなる、というエビデンスはありませんから、これを一般人口に適応すれば、8人に1人以上がコロナ陽性、という事になります。実は、現在、慶応義塾大学病院でも新型コロナのPCR検査を、ほぼ全例の妊婦さんを対して行っています。すると、相当な頻度で陽性患者が出るそうです。正確な罹患率は今後の発表を待たなければなりませんが、恐らくは、このニューヨークの報告と大体と同じような結果になるのではないか、という事でした。
一方、もう一つ見落としてはいけないことがあります。陽性者のうち、感染症状を発症した人は35人中5名(入院時には陰性だったが、その後感染症状が出て再度検査したら陽性だった人が1名いたので、1名追加になっています。)しかいなかった、という結果です。発症率は14.2%に留まっているのです。つまり感染しても症状を来すのは7人に1人程度で、残りの大多数は陽性であっても通常の生活を送っている、ということになります。
検査出来ない、してくれないという話は良く聞きます。でも、無作為に検査を進めれば、日本の人口の1割強が完全隔離となる可能性がある訳です。一方で、実際に症状が出るのも、陽性者のうちの1割強程度という事実。気になる症状は無いが、念の為に検査をしてみたら、サイコロで1を出すくらいの確率で陽性になってしまうのです。その人にとっては青天の霹靂に違いありません。いくら自分は健康だ、と喚こうが、陽性になった事実がある以上、その瞬間に隔離されてしまうのですから。
私は隔離されたくありません。職場を放棄したくありません。大体、「自宅待機」って言いますが、陽性者をゆっくり待機させてくれるような温かい自宅をお持ちの方が、いったい日本中にどれだけおられるのでしょうか。
あとは、こうした客観的な数字を見て、各々が自己責任でどのように主観的に判断するかでしょう。私自身は、検査を受けるような状況に追い込まれないことが一番大事だと思っています。そのためには、大事な事は二つです。一つ目が風邪を引かないこと、そして二つ目が濃厚接触者と断定されないこと。私には、「感染したらどうしよう」、と引きこもるよりも、感染していることを前提として、「発症しないようにするにはどうしよう」、と考えるほうが前向きな気がする。
検査体制が拡充してくれば、怪しいと思われた瞬間に検査させられる状況が出てきます。そうならないように、皆さん、体調管理を万全に。