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先天性サイトメガロウイルス感染症早期発見の取り組み (3)

文責:岸田 / 2019年10月22日

産科の岸田です。
先日の先天性サイトメガロウイルス感染症の続きです。

平成20~22年度の厚生労働科学研究班により行われた、全国23405人を対象とした新生児尿のサイトメガロウイルススクリーニングでは、先天性サイトメガロウイルス感染症は新生児の300人に1人(0.31%)と報告されています。

このことから日本での約100万出生では、3000人は発生していることになりますが、2011年に全国で先天性サイトメガロウイルス感染が確定されたのはわずか34症例のみであり、多くの感染児が出生時に見逃されていると推定されています。

先天性サイトメガロウイルス感染症の診断方法についてですが、血液中の抗体・ウイルス抗原を用いて診断した場合にはその多くを見逃すとされ、確定診断は生後3週間以内の尿からサイトメガロウイルス核酸を検出することとされています。

当院では妊婦さんにサイトメガロウイルス抗体スクリーニング検査を行なっており、先天性サイトメガロウイルス感染のリスクのある新生児には、入院中に尿のサイトメガロウイルス核酸検出法を行なっております。
この検査が陽性の場合には、早期に小児科専門医に連携しております。

今のところ先天性サイトメガロウイルス感染を防ぐためのワクチンは実用化されておらず、実用化されるのは早くとも10~20年はかかると考えられています。

したがって、現在最も大事なことは、お母さんが妊娠中に感染しないことです。

「妊娠中」感染しないために、赤ちゃんを守るために特に気を付けたいこと

サイトメガロウイルスは、感染したお子さんの唾液や尿にでてきます。
妊婦さんにおいてサイトメガロウイルスの主要な感染経路は、実は上のお子さんを含む周囲のお子さんです。
上のお子さんにとってもお母さんはかけがえのない存在です。これまで通り、愛情を持って接してあげて下さい。
その時に下記の点に注意するだけで感染のリスクを1/5~1/10まで、減らすことができます。

1.石けんと水道水で15 ~ 20 秒間、手を洗いましょう。
特におむつ交換、お子さんの食事、鼻水やよだれの処理、オモチャを触った後は、石けんを使って丁寧に手洗いしましょう。

2.お子さんの唾液やおしっこがついてしまったオモチャや家具等は、きれいに拭き取りましょう。サイトメガロウイルスは石けん、アルコール、漂白剤などに弱いので、手洗いや掃除の際は水だけではなく、こうしたものが入った、薬局で売っている消毒薬を使うと効果的です。

3.よだれのついたお子さんの手やオモチャが口の中に入らないようにしましょう。

4.食べ物、飲み物はお子さんとは別にし、同じ箸やスプーンやフォークも使わないようにしましょう。

5.お子さんにキスをするときは頬や唇へのキスは避けて、おでこにキスしたり、抱きしめてあげたりしましょう。

6.サイトメガロウイルスは乾燥に弱いので、敷物や布団類は天日で十分に乾燥させましょう。

7.保育所などお子さん方と接する機会の多い職場で働いている場合は、職場でも上記の感染予防法を実践しましょう。

これらを実践することと、妊婦さんのサイトメガロウイルス抗体スクリーニングによって、妊娠12週以降の母体初感染(抗体陰性者の陽性化)率は1~2%とされますが、0.19%に低下したとの報告があります。

妊娠中は「感染しないように予防すること」がとても大切です。
当院では、妊婦さんに感染予防のお知らせを積極的に行なっております。

前回もお伝えしましたように、近年、先天性感染児への抗ウイルス薬治療が日本でも試みられており、難聴の改善効果などが報告されています。