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先天性サイトメガロウイルス感染症早期発見の取り組み (2)

文責:岸田 / 2019年9月30日

産科の岸田です。
先日の先天性サイトメガロウイルス感染症の続きです。

先天性サイトメガロウイルス感染症とは、子宮内の赤ちゃんにサイトメガロウイルスが感染し、様々な症状が出てきてしまう感染症です。

感染経路は、唾液や尿、血液、性行為ですが、症状を伴いやすいのは、お母さんが妊娠中に初めてサイトメガロウイルスに感染してしまう、いわゆる初感染の場合です。初感染では、お母さんの血液に抗体がないために、赤ちゃんに症状が出やすく、かつ重症になる可能性が高くなります。

また、以前お母さんに感染していたウイルスが体の中に潜んでいる場合、そのウイルスが妊娠中に増殖してしまい(それを再活性化と言います)、子宮内の赤ちゃんに感染してしまうこともあります。

お母さんが妊娠中にサイトメガロウイルスに初感染したり、体の中でウイルスが再活性化しても、子宮内の赤ちゃんに必ずしも感染が起こるわけではありません。子宮内の赤ちゃんへの感染は、初感染ではおよそ40%の確率で起こるとされています。再活性化での赤ちゃんへの感染は、もっと低いと考えられています。

ただサイトメガロウイルスが子宮内の赤ちゃんに感染してしまったとしても、すべての赤ちゃんに症状がでるわけではありません。万一、赤ちゃんへの感染が成立してしまっても、赤ちゃんに症状が出る確率は20~30%程度です。

では、その症状(症候性と言います)にはどのようなものがあるでしょうか? 以下に主な症状を挙げてみます。

先天性サイトメガロウイルス感染症(症候性)の症状

低出生体重:赤ちゃんが軽い体重で生まれてきます。
小頭症:頭の大きさ(頭囲)が小さくなります。
紫斑(皮下出血):出血を止める働きのある血小板が減少して、皮下に出血が起こります。
肝炎:肝臓の細胞が壊れる肝炎の状態になります。
難聴:耳の聞こえが悪くなります。片耳の場合も両耳の場合もあります。
発達障害:軽度のものから重症のものまで、その重症度には大きな差があります。
てんかん:けいれん発作を起こすことがあります。
視力障害:網膜の炎症や眼球形成自体に異常が起こり、視力に影響が出ます。
死亡:多くはありませんが、最重症の場合は死亡することもあります。

一方、残りの80%は症状のない無症状(無症候性)で出生します。全く無症状で元気に生まれて、胎内で感染したことがわからずに大人になっていく感染児も多いことがわかっています。しかしそのような児のなかで、聴力障害などの症状が遅れて発症し、徐々に悪化することもあります。

将来、症候性の先天性サイトメガロウイルス感染症の90%に、神経学的後遺症を発症します。
そして、出生時はたとえ無症候性(80%)であっても10~15%にも神経学的後遺症を発症します。それ以外の無症候性の先天性感染児の85~90%は、正常に発達します。

この神経学的後遺症は、脳性麻痺や精神発達遅延やてんかんから自閉症スペクトラム症まで非常に幅が広いのですが、その中で、特に頻度が高いものが感音性難聴です。

幼児の難聴の20~25%が先天性サイトメガロ感染症であったという報告や原因不明の高度難聴児のうち少なくとも10%以上が先天性サイトメガロウイルス感染症であったという報告があります。
また、出生時に異常はなくても、その後症状が進行する遅発性進行性難聴という特徴も有しております。

近年、先天性感染児への抗ウイルス薬治療が日本でも試みられており、難聴の改善効果などが報告されています。抗ウイルス薬治療を行うかどうかは、小児科専門医との相談になりますが、出生時にきちんと先天性サイトメガロウイルス感染の診断を行うことと、精密検査と聴覚検査などのフォローアップを行うことが大切です。
当院では、この先天性サイトメガロウイルス感染症の啓蒙・早期発見に積極的に取り組んでおり、小児科専門医との連携も行なっております。

次回に続きます。