医療ブログ

先天性サイトメガロウイルス感染症早期発見の取り組み (1)

文責:岸田 / 2019年9月26日

産科の岸田です。
先天性サイトメガロウイルス感染症をご存知でしょうか?
妊娠中にお母さんが感染した結果、お腹の中にいる赤ちゃんに感染して、生まれてくる赤ちゃんに異常をきたすことがある感染症の1つに先天性サイトメガロウイルス感染症があります。

サイトメガロウイルスは、唾液や尿などを通じて、多くが子どものうちに感染します。
乳幼児から感染する場合が多く、上の子どもと妊娠中のお母さんが食器を共有したり、食べ残しを食べたりして感染することが多くなっています。
健康な子どもや大人には無害なありふれたウイルスなので、妊娠中でなければ感染しても問題はないのですが、妊娠している場合、胎児・新生児に様々な症状が出る恐れがあります。
赤ちゃん(胎児)が感染すると難聴や精神運動発達遅滞などの原因となるサイトメガロウイルスの母子感染です。

日本では、毎年生まれたばかりの赤ちゃんのおよそ300人に1人が感染するかなり頻度が高い感染症なのですが、医療関係ではない方も、また医療関係者でもその現状はあまり知られていません。

そして、先天性サイトメガロウイルス感染症のスクリーニングをしている日本の産科施設は、4.5%にすぎないと報告1)されております。
当院では、現在この先天性サイトメガロウイルス感染症の予防の啓蒙と早期発見に積極的に取り組んでおります。
最近、生後間もなくこの感染症が疑われる赤ちゃんを見つけることができました。

この取り組みは、私が北海道大学在籍時の恩師であり、現在は神戸大学大学院医学研究科・産科婦人科学教授の山田 秀人先生を代表とする全国の研究の結果1)を元に進めております。

この後このお話は、少々長くなりますので、分けてお伝えしたいと思います。

1)山田秀人(研究代表者).先天性サイトメガロウイルス感染症対策のための妊婦教育の効果の検討,妊婦・新生児スクリーニング体制の構築及び感染新生児の発症リスク同定に関する研究.厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)平成23年度総括・分担研究報告書,pp1-120,2012
(http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIST00.doよりダウンロード可能)