医療ブログ

意見箱のご意見から

文責:田中 / 2019年11月30日

どこの病院にも、意見箱なるものが置いてあります。メディカルパークにも日々沢山の患者さまからのご意見を頂戴します。感謝やお褒めの言葉もたくさんありますが、中には、お叱りのお言葉や、改善を求める切実なご意見も多数あります。これらを集計して、定例会議の場で、毎月対策を検討しています。
ここ数か月、頂戴するご意見に二つの顕著な傾向があります。一つ目は待ち時間に対するクレームです。もう一つは、病院職員の接遇態度に対するお叱りの言葉です。特に会計受け付けで、不快な思いをされる方が多いようで、同じ様なご意見を多数頂いております。
責任者として、恥ずかしく、そして、大変申し訳無く思います。
医学的な話とはちょっと離れてしまいますが、大事な事です。今日はこの問題をテーマにして書かせて頂きます。
まず、接遇の問題です。これはもう、社会人としての問題に帰結します。本人たちがそれで良いと思っていても、相手あっての接遇だという原点に立ち返り、あいさつ・礼儀・笑顔がどれだけ対面している相手の心象を左右するかを自覚させ、徹底的に教育するしかありません。
次が、待ち時間の問題です。この問題はもっと深刻です。(図1)は、メディカルパーク湘南に来院された患者様が、受付機に診察券を通してから会計を終了するまでの時間の年次推移です。年を追うごとに待ち時間は長くなっていることが一目瞭然です。

平均待ち時間で計算すると、2018年が66.3分、2018年が79.5分、2019年が91.9分と、2年前に比べて30分近く長くなっています。特に2019年の9月以降の延びが際立っており、10月の待ち時間は平均で114分とあまりに非常識な時間となっています。これでは、不妊治療中の患者様も妊娠中の患者様も疲弊しきってしまいます。待ち時間へのクレームは、ある意味、患者様の切なる悲鳴だと深刻に受け止めています。
この問題の背景には、ここ数年の患者数の増加があることは間違いないでしょう。しかし、それは言い訳にしかなりません。何が問題で、何を改善すれば良いのか、徹底的に詰めました。
2019年に入ってからの待ち時間の内訳の詳細を分析して見ました。すると、意外な事が分かりました。(図2)は受付をしてから、診察が終了するまでの時間帯の区分です。診察までの待ち時間自体は殆ど変化していない事が分かります。平均の待ち時間で見ても、52~57分で推移しており、大きな変化は有りませんでした。

一方、次の(図3)は、診察終了後から会計までの待ち時間を見たものです。特徴的な傾向が判明しました。8月から30分以上待たされる人が増え始め、10月においては31~60分が39%、60分以上が13%と会計待ち時間が急激に長くなっているのです。二人に1人の患者さんが会計の為だけに30分以上待たされていることになります。私も自分が病院を受診して、ようやく診察が終了して、そこからの会計待ちで待たされるととてもイライラしたことは過去に何度か経験しましたが、1時間は有り得ない長さです。この状況に耐え忍んで頂いている患者さんに対して、大変申し訳無く思います。

患者数の増加に対して、医療部門はしっかりと対応出来ている一方で、事務会計部門の対応が全く追いついていないという現実が明確になりました。
問題は、なぜ会計待ちでここまで待つようになっているのかです。会計業務を担うのは、医療事務員です。彼女たちの業務内容を改めて洗い出してみました。見えてきたのは、「疲弊」という2文字です。患者数の増加は外来の窓口業務の増大だけにはとどまりません。患者さんごとに発生するレセプトも増えて行きます。また体外受精や分娩の件数が増えれば、それに付随する助成金の書類業務なども雪だるま式にどんどん増えて行きます。そうした日陰の仕事をするためには、窓口の業務が終了してから取り掛かるしか無く、彼女たちの帰宅は夜10時を回ることもざらではありません。特に最近では、病院全体でダブルチェック体制を徹底していることもあり、さらにそれが一人の患者様の会計を出すまでの時間を延長させています。
そして、それに輪をかけて窓口業務を遅滞させている原因があります。それが患者さんからの予約などの電話です。当院では、1年ほど前に、電話回線を増設しました。「電話が全然つながらない」というご批判を受けてのことでした。それもあって、とにかく、電話が引っ切り無しに鳴り続けます。会計を待っている患者さんがいることが分かっていても、電話が鳴ってしまえば、そちらを優先せざるを得なくなってしまいます。受付窓口には常時3~5名をシフトに入れていますが、それでも、電話対応で他の業務に全く手が回らなくなることが常時発生しています。
しかし、これも言い訳です。
抜本的な業務改善を行うことを、この場で宣言致します。
まず、新しい受付予約システムを導入します。「@link」という受付予約システムで、これが導入されれば、患者さんは自宅から自分で簡単に予約や診察の受付が出来るようになり、受付順番待ちも患者さんのスマホにリアルタイムで表示されるようになります。初診の問診もすべてスマホで入力が可能になり、待ち時間短縮に大きく貢献するものと思います。
次に、診察室に呼び出しマイクを設置し、現行の自動呼出しシステムと並行して、昔ながらの音声呼び出しが出来るようにします。患者さんが増えた分、待合室の呼び出し画面には引っ切り無しに色々な番号が表示され、患者さんはいつ自分が呼ばれるのか、息をつく暇も無いようで、このことについても意見箱に改善の要望を沢山頂いております。そして、間違ったお部屋に患者様が入って来る、あるいは、患者様ご自身が呼ばれているのに気づけない、などの大混乱の要因になっています。音声での呼び出しも併用出来れば、確実に待ち時間の短縮につながるはずです
そのうえで、私から皆さまに2つお願いがあります。まず、病院への診療の予約は、新規の患者様以外は、なるべくホームページ経由で予約して頂くようにお願い申し上げます。現在、予約の受け付けは電話での予約が7割、ネットでの予約が3割くらいの比率になっていますが、電話予約の比率を下げられれば、患者さんの待ち時間短縮につながります。もう一つは、診療の問い合わせなどのお電話は、10時~17時(日曜祝日は10時~13時)の間にお願い申し上げます。朝の時間と夕方の時間は外来が大変込み合っているため、この時間を避けて頂けると大変有難いです。
同時に、ハード面だけではなく、ソフト面の改善も疎かにはするつもりは毛頭有りません。ベテランの医療事務職員が大勢分院に異動 になってしまったこともあり、本院の医療事務は若手が多くなっています。当然、一つの作業をこなすにも時間は多少かかってしまうわけで、若手のトレーニングを加速させる必要性を痛感しています。呼び出しマイクの導入は2019年中に完了する予定ですが、予約システムについては、電子カルテの乗換も伴うため、導入は2020年4月とまだ数か月必要です。それまでの間、職員のスキルアップを徹底致します。
以上、なんだか最後は国会の所信表明演説みたいになってしまいました。接遇態度と待ち時間の問題、この両者は全く別の事のようで、おそらく根っこは一緒です。待たされるから、悪気が無くても感じが悪く取られてしまうのです。待たされるから、患者さんもイライラして、それが職員にも伝わって、笑顔での対応が出来なくなって、悪循環に陥っていくのです。兎に角、やれることはすべてやります。私も啖呵を切った分、後には引けません。1か月後、2か月後に、待ち時間が数字で明確に短縮されたことを、この場でご報告できるよう、全職員が一丸となって改善して参ります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

①医療機関が各健康保険組合に請求する診療報酬明細書のこと。月ごとの請求のため、毎月初はどこの病院でも、医療事務職員は、膨大な量のレセプトを纏めるために、深夜まで作業に追われる羽目になる。
②株式会社オフショアが開発した診察予約システム(http://at-link.net/index.html)。近年、特に産婦人科の専門病院などで急成長を遂げている。メディカルパーク横浜では開院時より@linkを導入し、働きながら不妊治療を続けたい女性などに大変好評をいただいている。
③滑舌の問題で音声呼び出しの方が実は混乱を助長してしまう不安もぬぐい切れない。例)「突き当りのお部屋」→「月明かりのお部屋」
④メディカルパーク横浜、メディカルパーク二俣川、メディカルパーク湘南こどもクリニックの事。メディカルパーク入間はここには含まれない。入間への異動には誰一人として応諾してくれなった為。例)「島流しだけは絶対に勘弁してください!」