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SEET法(体外受精の話題)

文責:田中 / 2021年7月10日

体外受精の中で、「SEET法」と呼ばれる移殖方法があります。

SEET法というのは、採卵後に卵を浸しておいた培養液を凍結保存しておいて、それを胚移殖の数日前に子宮内に注入する方法です。10年ほど前に、この方法が体外受精の妊娠率を劇的に改善するという報告がアメリカの不妊学会誌に発表され、話題を呼びました。しかし、その後それほど広がりは見せませんでした。というのも、導入したクリニックも沢山あったものの、目に見えた効果は無い場合が多かったためです。私たちも、その当時は積極的に患者さんにお勧めして、相当の件数を行いました。しかし、データを取ってみると、SEET法を行った群と、行っていない群と比較して、妊娠率は全く変わらず、患者さんに提案することもやめてしまいました。

ところが、最近、「SEET法について、教えて欲しい」という患者さんが急に増えています。理由を伺うと、「ネットで非常に有効な方法だと書いてあった」と異口同音に仰います。

SEET法は2段階胚移殖をより簡便にした方法と言えます。理屈で考えても、妊娠率の向上を図るのであれば、SEET法よりも2段階移殖の方がより圧倒的に効果が期待できます。ですので、残念ながら、SEET法に過度な期待を抱くのは行き過ぎだと思います。もちろん、それでも患者さんがご希望されるのであれば、SEET法はすぐに出来ます。その場合には、培養液を凍結しておく必要があるので、採卵時にお申し出ください。SEET液の注入は、移殖の数日前に行います。凍結は無料です。SEET液の注入は1万円かかります。

※当記事は2021年4月9日付の田中院長amebaブログより参照。