不妊治療

不妊治療Q&A

不妊治療のよくある疑問について、院長がお答えします。
ここで解決しないことは、初診の時や治療中にお気軽にご質問ください。
また院長の書籍「最新 不妊治療・体外受精がわかる本」の中でもたくさんの疑問にお答えしていますので、参考になさってください。

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治療全般について

基礎体温が排卵日と思われる日に下がりません。無排卵なのでしょうか?
基礎体温表が二相性になっていれば、まず間違いなく排卵が起きていると考えていいでしょう。
排卵日頃に一度基礎体温が下がると思っている人が多いですが、谷になるのはだいたい1/3くらいの人で、残りの人はなだらかに上がっていきます。きれいなV字形にもならなくても、月経後半期に体温表が台形型に見えていれば排卵はしている可能性が高いです。
ただし、月経周期が長い、高温期が全くはっきりしない、普段は周期が30日くらいだけど、3~4回に1回くらい2~3ヶ月抜けてしまうというような場合は、早めに検査したほうがいいでしょう。
自分たちで基礎体温から排卵日を予測するのと、病院でタイミング指導をしてもらうのは何が違うのですか?
病院では超音波検査を行い、卵胞の大きさを確認します。
成熟した卵胞は直径が20㎜前後で排卵することがわかっています。そこで、排卵予測日の3日程度前に超音波検査で卵胞のサイズを計り、正確な排卵日を予測します。
人工授精がうまくいかない場合、何度くらいで諦めるべきですか?
ステップアップのタイミングを教えてください。
人工授精の妊娠率は、年齢、精液所見、卵巣機能など患者様の状況によって大きく変動します。
当院の集計データでは、人工授精で妊娠した方の3/4は4回以内に妊娠しています。また6回以上は妊娠率が上昇しないことがわかっています。したがって、人工授精を4~5回行っても妊娠しない場合は、ステップアップを考えたほうがよいと思います。
遠方からの通院も可能ですか?
一般論として、物理的に距離が近いほうが、肉体的、経済的に負担が少ないことは間違いありません。遠方から通われる患者さんには、注射も自己注射だけにする、採卵の結果を電話でお伝えするなど、なるべく通院の回数を少なくするための配慮をするようにしています。遠いことで、本来できる治療ができなくなるということは基本的にはありません。

体外受精について

排卵誘発の方法で、卵の質は変わるのでしょうか。
これは非常に多い質問です。誘発の方法で卵子の質は変わりません。もし最も優れた方法がわかっていれば、世界中がその方法で行うはずです。そうなっていないということは、これがベストといえるものはないということなのです。ただし、その人に合っている方法、合っていない方法というのはありますので、ある誘発方法を何度やっても卵の質が悪ければ、やり方を変えて変化が出るかどうかを見るべきです。
採卵中・採卵後に痛みはありますか?
当院では採卵に使う針は非常に細径の針を使用しています。そのため、麻酔無しでも十分採卵は可能です。しかし痛みや採卵に対する恐怖心が強い方は、麻酔を使用する方法もあります。
麻酔には局所麻酔と、全身麻酔(静脈麻酔)があります。
局所麻酔ですと完全に痛みがとれない場合もありますが、静脈麻酔では血管内に鎮痛剤・鎮静剤を注射しますので、眠っている間に採卵が終わってしまいます。麻酔を使用した場合には、採卵後30分~1時間程度安静にしなければならない、麻酔後は車の運転などを控える、などの制約も生じてきます。ですので、麻酔を使う、無麻酔にするかは、患者さんの選択に任せています。
移植後はどれくらいの期間、安静にしていればいいですか?
移植直後の病院での安静時間は着床率には関係ないといわれていますが、一般的には30~60分間くらいの時間をとっています。当院では移植後45分間、リカバリールームで安静にして頂いています。
帰宅してからも基本的には安静にする必要はなく、普段通りの生活をして大丈夫です。
ただ、医学的な根拠としていえることは、受精卵は受精後5~7日目の胚盤胞の段階で着床します。
ということは、初期胚での移植は着床するのが2~3日後、胚盤胞の場合は1~2日以内ということで、その間、受精卵は子宮内(あるいは卵管内)でフワフワしている時間があり得るわけです。
ですから、その期間は激しい運動は控えて少し安静気味に生活すればより安心でしょう。
体外受精か顕微授精かの適応はどのように判断すればいいのでしょうか?
体外受精の場合、病院によって1個の卵子に対して、運動精子を何匹持ってくるかというのを決めています。卵子1個に対して精子10万~40万匹くらいと決めている場合が多く、精子の回収個数がそれを下回ったら顕微授精にするというのが一般的です。
40歳以上になると採れる卵の個数も少なくなってきますし、チャンスも少なくなってきますから、顕微授精を用いる頻度は多くなってくると思います。卵が固いとか受精しにくいとか、透明体が悪いなどということが出てきますから、同じ精子の所見でも患者さんの年齢によって適用するかどうかが変わってきます。
新鮮胚と凍結胚、どちらが有利なのですか?
子宮が卵を受け入れる時期は1カ月のうちの4~5日しかありません。これを「implantation window:着床の窓」と呼びます。排卵誘発でアンタゴニスト法やショート法など卵巣を強く刺激すると、この着床の窓が開くタイミングがずれて早くなってしまうことがあります。その場合には1回凍結をしてリセットし、自然周期かホルモン補充周期で移植をしたほうが優位に働きます。
現在の日本では体外受精妊娠のうち、約6割がこの凍結融解胚移植による妊娠です。
一方、完全自然周期で採卵していれば、子宮が薬の影響を受けていないので、新鮮胚をすぐ戻すことができます。
高齢だと体外受精でも成功する確率は低いですか? 年齢と体外受精の成功率の関係を教えてください。
年齢と体外受精の成功率の関係は明確です。当院のデータでは、例えば34歳では移植あたりの妊娠率は35%ですが、42歳では13%となっています。13%は単純に考えると7~8回の移植で1回妊娠するという計算ですから、確率的に低いと感じられるかも知れません。しかし、逆に4回移植をすれば52%が妊娠できるという計算も成り立つわけで、決して悲観する必要はない数字だと思います。
*詳しくは体外受精データをご覧ください。