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クリスマス(1994)

2019年12月25日

マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス(All I want for Christmas is you)」が爆発的にヒットしたのは1994年。当時、私は医学部の4年生でした。その頃、私はひょんなことから病理学教室の先輩の実験を手伝う事になり、秋口から連日夜遅くまで研究室に引きこもり、DNAの配列の解析などの実験をしていました。「研究」といっても、学生が出来ることなど限られており、今考えると、子供のママゴトみたいな恥ずかしいレベルだったに違い無いのですが、その当時はいたって真剣でした。
あれは12月24日のクリスマスイブ。研究室にはいつもFM放送が流れていて、その日は朝からマライア・キャリーがかかりまくっていました。いつも終電近くまで実験を続けている諸先輩方もその日だけは皆朝からソワソワしていて、夕方になると三々五々いなくなってしまいました。夜になって、誰も居なくなった研究室で私は黙々と課せられた仕事をしていました。いつも以上に蛍光灯の白さが際立っていたのを覚えています。実験というのは、仕込みだけして、その間に数時間空き時間が出るもので、例えば、PCRというDNAの増幅機をスタートしたら、出来上がるのは2-3時間後。その空き時間を利用して、私は良くプールに通っていました。私は当時競泳部に所属していたのですが、幹部学年となり、更にキャプテンを任され、チームを牽引する立場でした。水泳という競技はどれくらい幼少期からやっていたかによって、殆ど実力が決まってしまう競技。大学生になってから競泳を始めた私が、水泳経験者のライバル達と競う為には、人の倍以上に努力するしかありませんでした。だから、正規の部活動の練習以外にも、自主練を欠かしませんでした。プールは四谷の辺りにありました。大学のキャンパスから丁度一駅分ですが、電車代が勿体無いので、キャンパス内に自転車を置いて、そこからプールまで自転車で通っていました。
さて、その日、研究室を出たのは恐らく19時位。そして、いつも通り2000m位を泳ぎ込みました。そして21時くらいにプールを出ました。このあたりは、上智大学、迎賓館、ホテルニューオータニや赤坂プリンスなどが密集している地域です。途中、ホテルニューオータニの正面ゲートに差し掛かった時でした。そこには、息を飲むような豪華絢爛な別世界が広がっていました。壁、木、建物、全てが金色にライトアップされ、そこだけ昼間のように明るくなっていました。ホテルのエントランス付近には、イルミネーションに照らし出された煌びやかな色の立派な車が夜光虫の如く殺到していました。余りに数が多いので、駐車場に入りきらず、外の道路にまで車が溢れていました。そして、それをこれもまた半端ない数の警備員が笛を吹き鳴らしながら必死で誘導していました。歩道にも着飾った若い男女が大勢肩を寄り添うように歩いています。自転車の私は、それを避けるために車道に出ました。その途端、警備員の1人がけたたましい笛を鳴らし、交通整理棒を振り回しながら、私に向かって何かを怒鳴りました。私は逃げるようにその場を離れました。そこで漸く気づきました。ああ、そうか、今日はクリスマスイブだったんだ。1994年、当時バブルの余韻はまだまだ残っており、赤坂プリンス、帝国ホテル、ホテルニューオータニなど一流ホテルはクリスマスの時期は1年前から軒並み満室になると言われていたものです。1年に1回のクリスマス。みんな、なんて楽しそうなんでしょう。東京中の幸せな若い男女すべてが、ニューオータニに集結しているかのように見えました。
交差点で信号待ちをしていると、夜のビルの窓ガラスに自分の姿が映っているのにふと気が付きました。髪の毛はまだ水が滴る位にびしょ濡れのまま。路上生活者のようなボロを着込んだ防寒対策。両手には白い軍手。まあ、なんとみすぼらしいことか。これでは警備員がすっ飛んでくるのも無理は無いと思いました。
その後、コンビニに寄って、研究室に戻って実験を続けました。FMラジオからは相変わらずのマライア・キャリー。その曲をたった一人、研究室の中で聞きながら、電気泳動のゲルを作りながら、冷たいおにぎりを頬張りながら、私は心の中で繰り返し繰り返し念じていました。
「テメーらいつか見てろよ。オレもいつか必ずそっち側行ってやるからな。」
そうすると、沸々と力がみなぎり、何故か実験にも身が入り、益々水泳にも気合が入る気がしてくるのでした。
クリスマスになると必ず思い出す、我が青春の屈折した原風景。
あれから既に四半世紀。未だクリスマスのニューオータニデビューは果たせていません。そして、冬の手袋はやっぱり軍手が一番ありがたい。兎に角温かい&片方無くしても右左コンバート出来るから。

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