不妊治療

はじめて不妊治療を受けられる方へ

不妊の原因

妊娠するためには、健康な卵子と精子、そして卵を運ぶための卵管、赤ちゃんを育てる子宮が必要です。
しかし、女性の年齢が上がれば卵子も老化し、卵管や子宮の不調も増えていきます。
近年の晩婚化で、30代を超えてから妊娠を望む女性が増えているのも、不妊症が増えている大きな要因です。
また女性だけではなく、現代社会は男性もストレスにさらされることが多く、不妊原因の約半数は男性にあるともいわれています。
WHOが行った調査によると、「男性側に原因」「男女両方に原因」を合わせると、48%は男性にも原因があることがわかります。
まずは男女ともに不妊の原因を検査することが大切です。

ではどんな原因があるのか、見ていきましょう。

不妊の原因の割合(WHO 1998年)

不妊の原因の割合(WHO 1998年)

女性側の原因

排卵因子

通常であれば女性は1ヶ月に1回のペースで排卵が起こります。この排卵が数ヶ月に1回の場合を稀発性排卵、全くない場合を無排卵といいます。排卵は脳の視床下部、脳下垂体、卵巣の3つがうまく連動してはじめて起こります。このどこかに異常があると、うまく排卵が起こらなくなります。
基礎体温が二相にならない、月経が不規則に起こるという場合は、排卵がうまく起こっていない可能性があります。

原因
  1. ダイエットやストレスによる無排卵
    過度のダイエットによる性腺刺激ホルモンや甲状腺機能の低下、強いストレスによる自律神経の乱れが及ぼす視床下部へ影響などで無排卵月経になる場合があります。
  2. 高プロラクチン血症
    プロラクチンは下垂体から分泌されるホルモンの一つで、乳汁分泌ホルモンと言われ、授乳期に多く分泌されます。授乳中ではなくてもこのホルモンが過剰に分泌されることがあり、分泌量が多くなると排卵障害や不妊の原因になることが知られています。
  3. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
    卵巣の中で原子卵胞が主席卵胞へと成熟していかないため、排卵が起こりにくくなる症状です。
  4. 黄体化未破裂卵胞(LUF)
    排卵と同じプロセスは起こっているけれど、卵子が卵胞から飛び出さずに残っている状態です。健常者でも一定の頻度で起こっていると考えられますが、何度もLUFを繰り返す場合には不妊の原因となり得ます。

卵管因子

卵管は排卵した卵を吸い上げ、受精した卵を育てながら子宮まで運ぶ大切な役割を持っています。
卵管が詰まっていたり、傷ついていたりするために不妊になっているケースが多くあります。
卵管が閉塞する原因、また卵管が周囲と癒着して通過障害を起こす原因として、クラミジアによる骨盤内感染症、子宮内膜症、チョコレート嚢腫などがあります。

原因
  1. 卵管閉塞・狭窄
    卵子と精子は卵管内で受精します。卵管閉塞は卵管がふさがっている状態、卵管狭窄は卵管が狭くなっている状態で、治療しない限り自然妊娠は望めません。クラミジアの感染が原因となると言われていますが、実際のところなぜ起こるのかよくわかっていません。
  2. 卵管癒着・卵管周囲癒着
    クラミジアなどの感染症により卵管内で炎症が起き、卵管内または卵管の周囲が癒着している状態です。この症状があると受精率が低下したり、授精しても着床しない可能性が高くなったりします。
  3. 卵管水腫
    細菌に感染した卵管に炎症が起こり、それが卵管の先の卵管采にまで広がり、膿や水がたまった状態です。卵管水腫があると着床障害を起こし、不妊の原因となります。

子宮因子

子宮に異常があると、受精卵が着床できなくなったり流産の原因になったりします。
子宮の異常には生まれつきのものや、子宮筋腫や子宮内膜症などが原因となっているものがあります。
不正出血がある、月経が長引く、月経痛がひどいなどの症状がある場合は、早めに検査を受けましょう。

原因
  1. 子宮筋腫

    子宮筋腫は子宮の筋層にできる良性の腫瘍です。内側に突出する粘膜下筋腫、子宮筋層の中にできる筋層内筋腫、子宮の外側にできる漿膜下(しょうまくか)筋腫の3種類があり、発生部位が子宮内腔に近くなればなるほど妊娠に影響する可能性が高くなります。

    子宮筋腫

  2. 子宮内膜症

    本来なら子宮の内側にできる組織が、子宮筋層、卵巣、卵管、腹腔内などに増殖していく病気です。若年女性の10人に1人がもっているといわれ、また不妊治療をしている3人に1人が内膜症というデータもあります。

    子宮内膜症の発生部位

  3. 子宮奇形

    腎臓や肺が2つあるように、お母さんのおなかの中にいる時は子宮は2つあり、やがて融合して1つになるのですが、融合不全で生まれてくることがあり子宮奇形となります。子宮奇形があると、少し着床率が下がったり流産率が上がったりする傾向があります。

    子宮奇形

  4. 子宮内膜ポリープ
    内膜がキノコ状に発育したもので、不妊治療を始める方には高頻度で見られる症状です。ポリープが邪魔をして、受精卵が着床できないことがあります。

その他の原因

  1. 黄体機能不全
    排卵後には、受精卵の着床と発育を促すために黄体ホルモンが卵巣から分泌されます。基礎体温の高温期が10日以上続かず、高温期中期の血中プロゲステロン値が10ng/ml以下の場合、黄体機能不全と診断されます。
  2. 抗精子抗体
    血液の中に精子に対する抗体を持っていて、精子が入ってくると攻撃して機能を妨げたり動きを止めてしまったりする症状です。数%の人が抗精子抗体を持っているといわれています。
  3. 不育症
    妊娠はするけれど、流産や死産を繰り返してしまい、結果的に生児を得ることができない症状を不育症といいます。染色体異常による流産は偶発的なものですが、流産を2回繰り返すことを反復流産、3回以上繰り返すことを習慣流産といいます。
  4. 原因不明不妊
    検査を受けても不妊の原因が見つからないことは多く、機能性不妊と言われています。
    この場合は一般的に、タイミング法→人工授精→体外受精とステップアップ治療を行います。

男性側の原因

不妊の原因は女性側だけにあるのではなく、約半数は男性側にもあることがわかっています。
男性の不妊の原因は大きく3種類に分けられます。

原因

  1. 造精機能障害
    精巣で精子が作られていない非閉塞性無精子症、精子の数が少ない乏精子症、運動率の低い精子無力症などがあります。精索静脈瘤は、精巣内の血管弁の機能不全で血液循環が悪くなり、精巣近くに静脈瘤ができて睾丸の温度が上がり精子が死んでしまう症状です。
  2. 精路障害
    精巣上体管や精管がつまり精子が精液に混ざらない閉塞性無精子症、精液が膀胱に逆流してしまう逆行性射精障害があります。
  3. 射精障害
    勃起できず性交渉を持てない症状です。全く精子を出せないという状態であればEDという診断になりますが、性交渉は無理でもマスターベーションなら大丈夫という人もいて、不妊治療のなかでは後者のほうが圧倒的に多いようです。